ふうわなくらし85 左官の手

大月 傑

 

 友人のパン窯造りを義父と手伝いに行きました。父は長年にわたって左官をしてきましたが、事故で重傷を負い、目が見えにくかったり、重いものを持てなかったり、背中に痛みもあり、なかなか思うようにいきません。

 そこで、私がものを運んだりモルタルを練ったりと父の「てったい(手伝い)」をします。「ここ合うとるかいな?」と目の代わりもします。しかし驚くべき事に、はっきり見えていないレンガが、すでにピッタリと水平に積まれています。父の手は、コテにすくい取ったモルタルの重さと粘りでレンガの高さを計算しているようです。まさに父にしかできない仕事です。

 何かかができなくなった時、残された能力にこそ「その人らしさ」があることに気づかされました。

ささやま里ぐらしステイ

Twitter